日本の企業物価指数によると1991年頃から現在(2022年)にかけて約30年間に渡って日本はデフレが続いていました。
しかしその時代は終焉に近づき、もう明日にでもインフレが始まってもおかしくない状況にあると言われています。
この記事ではインフレとはどのようなメカニズムで起こるのか?急速にインフレが進んだ結果、過去にはどのような失敗があったのか?現在インフレに拍車をかけている社会情勢とはどのようなものなのかについて解説していきます。
インフレとは?
インフレとは物価の継続的な上昇、またはその状態を指す言葉です。英語では『Inflation』と記載されます。
例えばある商品が100円で売られていても即完売するようなものであった場合、その商品や類似商品は価格を5%上げ105円にしたとしてもまだ即完売する可能性があります。
こういった需要に対して供給量が足りない場合、物の価格は上昇することが確認されます。
これらが生活に寄与するすべての製品に起こる場合物価が上昇していくことになり『○年前に比べて貨幣の価値が下がった』という状態が生まれるのです。
通常の流通では物の価格が上昇し、相対的に貨幣の価値が下がることで、需給に軋轢が生じていきます。
インフレの原因としてポピュラーなのは、輸入品の価格が上がることです。
海外から天然資源などを輸入している場合、その国や周辺地域でなにか悪いことが起こったときに、天然資源の世界流通量が減少し、資源の輸入額が高くなることになります。
その資源を利用した国内の加工製品の物価も上がり、結果的に今持っているお金の価値が低くなっていきます。
日本は穀物やエネルギーなどの多くの原材料を海外に依存しており、原価の高騰がそのまま製造業のコストとなります。
将来的に今まで500円で買えていたコンビニ弁当が700円以上出さないと買えなくなる日が来るかも知れません。
インフレが始まるとその初動では国内のお金の循環はよくなる傾向にあります。なぜなら消費活動が活発になるからです。
例えば、日常で使う消耗品も明日にはまた値上がりしてしまうかもしれないという考えが働き、値上がりする前に購入しようと購買活動が活性化するからです。
しかし急速なインフレは社会の崩壊にも繋がります。これの極端な例がオイルショック時のトイレットペーパー不足やコロナショック時のマスク不足です。
購入希望者がいるのに商品はない。あるいは、商品が通常の何倍の価格にもなっている状態です。
デフレとは?
デフレとは物価の継続的な減少、またはその状態を指す言葉です。英語では『Deflation』と記載されます。
例えばある商品が100円で売られていても全く売れなかった場合、その商品や類似商品は95円、90円と値下げをしないと売れ残ってしまいます。
ある一定の価格に対して買手がつかないとき、消費者はその商品にその値段ほどの価値を見出していないということになるので、その商品を売るためには価格を下げざるを得ません。それに伴って競合サービスや競合商品も値段を下げてくるので、売れ残りをなくすための価格競争が始まります。
こうしてインフレの場合と需給のバランスが逆方面になってしまっている場合、物価は減少していきます。
2022年現在、日本のデフレは約30年続いていると言われています。
『デフレ脱却』というワードを聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?
デフレが長く続く場合、購買意欲の停滞や低下から商品の流通が鈍化します。
商品の流通が鈍化するということは小売りの売り上げが下がるという事であり、総じて社会全体の需給にかかわってきます。
需要が減るとなんとか物を売り切るために先ほど提示した様な同一商品での値下げ競争が始まります。しかし値下げは利益幅を下げる行為ですから純利益が減っていきます。
企業の売り上げや純利益が低下した場合、次に来るのは従業員のコストカットや商品そのものの品質の低下です。
物価が下がり続けることによって、その他の項目も連動して下がってしまい、そのコミュニティ全体(基本的には国単位)が貧しくなっていきます。
こうした負の連鎖によって経済の成長を止めてしまうことをデフレスパイラルと呼びます。
日本では長いデフレの中でタンス預金と呼ばれる市場に回らないお金や、企業の内部留保が増え続けたことで実体経済が総資産ほど潤沢に回っていないという問題が浮き彫りになっています。
スタグフレーション
スタグフレーションとは景気停滞を意味する『Stagnation』と『Inflation』を組み合わせた合成語です。
インフレは徐々に進めば好況になりますが、急速にインフレが進むと人々の給料の上昇が物価の上昇に追いつかず、給料は低いままに家賃や日用品の値段ばかりが高くなります。新しいものを買おうという購買意欲は削がれ、経済の動きは止まってしまいます。それがスタグフレーションです。
そろそろインフレが来ると言われていますが、インフレに拍車がかかりスタグフレーションが起こりそうになった場合、それを防ぐために国はまず金利を一度上げるという策を講じます。
そうすることで世の中に出回っているお金の量を一時的に減らします。それが行われると一時的に不況になります。
過去のインフレ・デフレといえば…
過去には世界中のあらゆるところで国の経済を崩壊させるようなインフレやデフレが起こっています。
今回はデフレによって国の経済が崩壊した事例とその背景を解説します。
第一次世界大戦後ドイツのハイパーインフレ
第一次世界大戦後のドイツ。第一次世界大戦といえば1918年にドイツが降伏したことで終戦しました。
終戦後のドイツの物価は約1兆倍にまで上昇しました。ほとんどのドイツ国民が一瞬にして財産を奪われたも同然です。
どうして当時のドイツでそんなにも急速なインフレが起こったのでしょうか。
第一次世界大戦は1914年~1918年にかけて行われました。
戦争開始の前年となる1913年のドイツの財政支出額は約35億マルク(ドイツの通貨)でしたが、休戦となった1918年にはその額が約13倍の約455億マルクに膨れ上がっていたことが記録されています。
1918年に休戦に入ると、翌年の19年にはヴェルサイユ条約を締結する運びとなり、結果的にドイツは敗戦というカタチになりました。
敗戦国は戦勝国に対しての賠償金の支払い義務が発生するため、ドイツは巨額の債務を抱えてしまい、債務超過に陥ります。
これを解消すべく、政府は経済的な裏付けのないまま大量のマルク紙幣を増刷しました。
自国の通貨を過剰に発行し、借金を返済しようとしたのです。
通貨流通量が一気に増えると、貨幣価値の暴落が起きます。
さらにドイツ政府はそれまで緩かった所得税のような直接税を大幅に引き上げました。
これらの施策により物価は一気に高騰し、国民の持っていたお金はほとんど価値のない紙切れ同然の物になってしまったのです。
金遣いの荒い弟と倹約家の兄、どちらが得をするか、という有名な逸話があります。
兄が買い物に行くために大量の札束を背負っている姿を描いた風刺画です。
当時のドイツは今日稼いだ1万円が明日には紙クズになっている時代だったので、今日稼いだ1万円を貯めておく兄ではなく、今日稼いだ1万円は今日使いきる弟の方が豊かな生活ができたというお話です。
札束をタワーにして遊んでいる子供達の写真もハイパーインフレを象徴する写真として有名です。
ロシアのウクライナ侵攻でインフレに拍車がかかる理由
資源不足による原材料高騰も急激なインフレの要因の一つです。
2022年2月、ロシアがウクライナに対して侵攻開始を宣言し、戦争が始まりました。
ロシアは天然ガスや原油、穀物といった重要な資源を世界中に輸出しており、特に原油の生産高は世界全体で12.1%を占めるほどの割合で世界第三位となっています。
ロシアの戦争という選択に対して世界経済はSWIFT除外という経済制裁を行いました。
これはロシア・ルーブルでの外貨取引を停止する狙いで、世界経済から孤立させるという意味を持ちます。
しかし、同時に資源産出国であるロシアは自国の豊かな資源と核を盾にウクライナ侵攻を続けました。
経済的に孤立し、輸出入が著しく滞ったロシアが関連しているコモディティは世界中で高騰を続けます。
なぜなら原油であれば全体供給量の10%以上が、穀物であればロシア・ウクライナ合わせて全体の供給量の25%程度が保証されなくなったからです。
こうして、急激な原油や天然ガス、小麦や大豆などの穀物が瞬く間に高騰してまず企業を直撃します。
それらはいずれ商品価格に反映され、販売価格が上がっていきます。
まさに急激なインフレの序章となるのです。
日本もロシアから原油や石油製品、石炭などさまざまな資源を輸入しています。
石油製品にはプラスチック、衣服、ゴムなどが含まれるため、私達の生活には石油製品に大きく依存している状況で、このインフレの波がすぐに日常生活に影響を与えるものと考えられています。
また、世界シェア2位のサウジアラビアは2022年3月上旬、この情勢に応じて石油価格の値上げを発表しました。
OPECはこれに対応し原油生産の加速を提言しましたが、まだまだ原油価格は高騰すると経済アナリストは試算しています。
インフレに備えることはできる?
インフレの到来が迫っている今、私たちはどのような対策ができるでしょうか。
まず考えられる方法は、『ゴールド』や『レアメタル』などのコモディティに投資するという方法です。
これらは世界に埋蔵量が決まっており、価値がほとんど変わらないものとして知られています。金塊やレアメタルを買っておけばそれに支払った金額の資産が消えることはありません。
時代背景に合わせて自分の資産を効率的に運用、もしくは逃がすことで、貨幣価値の暴落から自分の資産を守ることができるかもしれません。
投稿者プロフィール
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美容が好きな20代。貯金は美容にかけていることが多いです。
インコのザシアンと一緒に暮らしています。
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