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皆さんは看護師という職業にどのようなイメージを持っていますか?

毎日病棟で働くのが当たり前、夜勤も多く激務、女性社会で人間関係が大変…。

それらはすべて過去の産物です。現代の看護師としての働き方は多岐に渡り、美容や医療の情報をSNSで発信ながら、時給制や業務委託として週◯回看護師として働く、その様なフリーランス看護師という働き方も登場しています。

フリーランス看護師にはどのようになるのか、フリーランス看護師のメリットは何なのか。

現在フリーランス看護師をしながら自社ブランドを立ち上げ、新作化粧品を続々と世界に発信、さらに1児の母でもある社長さんにインタビューしてきました。

このシリーズでは1年間就活を経験した私が現役社長や役員の方々を訪問し、インタビュー形式で社長さんの人生やキャリアの選択方法について語っていただきました。

働き方改革と緊急事態宣言で変わったことはなんですか?

今後の就活生はどこを見て仕事を選んだらいいの?

今世紀最大の就活氷河期を生き抜いた私が聞きたかったことをズバズバ聞いてきました。

就活生の皆様、ぜひ参考にしてみてください。

編集担当:たまご

インタビュー日時:2022年11月

病棟で働くだけがすべてじゃない 潜在看護師の働き方を支えたい

今回インタビューさせていただいたのは株式会社ミュールの大島絵美社長。

看護師の専門学校を卒業後、精神科病棟、美容外科皮膚科クリニックを経験したのち、クリニックの立ち上げメンバーとして参画。皮膚科時代に患者さんとのコミュニケーションから生まれたスキンケアブランド『ケアテア』を発足しました。

現在は『ケアテア』の製品を世界に拡大していこうと様々な試みを行っています。

今までのキャリアで失敗から学んだこと、今看護師になろうと頑張っている学生さんたちへのメッセージも伺ってきました。

社名の由来は“新たな一歩を足元から支える靴”

たまご:お名前と御社名の正式表記を教えてください。

絵美さん:株式会社ミュールの大島絵美です。

たまご:御社の社名の由来は何ですか?

絵美さん:女性が履くサンダル・パンプス・ヒールなど、靴の種類のミュールです。“新たな一歩を足下から支える靴”という意味でミュールと名付けました。

絵美さん:一人ひとりのライフスタイルに合わせた働き方でワーク・ライフ・バランスをサポートする企業を目指しています。

たまご:オシャレなハイヒールを履いて颯爽と歩く女性の姿が思い浮かびます。素敵な名前ですね。

たまご:絵美さんの略歴を教えてください。

絵美さん:慈恵第三看護専門学校を卒業後、精神科病院へ入職。その後、アンチエンジング専門の美容外科・美容皮膚科にて勤務いたしました。クリニックの立ち上げ後、サロン経営をしながら、フリーランス看護師となりました。

たまご:御社の職種・サービス内容について教えてください。

絵美さん:webを中心に、美容・健康・医療をテーマとしたクリニック向け制作・広告代理・人材事業を行っています。メディア運用、医療記事の監修など看護師の知識を使った制作会社です。今はD2C化粧品ブランドを立ち上げ、化粧品メーカーとしてもサービス展開しています。

たまご:実際に看護師の資格を持っており、看護師の経験もある方々が行っている医療・美容事業というのはとても説得力がありますね。

たまご:御社のアピールポイントを教えてください。

絵美さん:理念やコンセプトが外れていなければ、直感のアイディアでもまずやってみます。走りながら改善していくので、スピードが早いです。

たまご:私も絵美さんたちの活動を見ていて本当に普段の会話の中で生まれた案をすぐに採用しているイメージです。いろんな人がSNSですぐに情報を発信できる今だからこそ、スピード感は大事ですね。

たまご:事業を始める上で大変だったことはありますか?

絵美さん:一番大変だったことは、化粧品を仕入れるために、結構な額のお金が必要だったので、融資を申請したことです。

絵美さん:看護師で働いていても、必要な物品は申請すれば購入してもらえる、自分でお金を用意するということはなかったので、お金を借りるために、事業計画から事務的なことまで全てやりました。

絵美さん:自己資金でやっていたサロンから業態変更で、在庫リスクを抱える化粧品業界に新規参入した不安もありました。今改めて考えれば…やっていないかもしれないです。その時は、勢いで無我夢中だったのかと思います。

たまご:在庫を抱える事業の新規参入は余計に難しいとよく聞きます。自分で飛び込んでいける勇気がすごいですね。

看護学校はメンタルのやられる場所だった

たまご:絵美さんの子供の頃の夢は何でしたか?

絵美さん:看護師、お花屋さん、アナウンサー、ウエディングプランナーなど、気分屋でその都度コロコロ変わっていました。

たまご:その中でも最終的に看護師を選んだのはなぜですか?

絵美さん:出身が函館なのですが、親が厳しくて早く家を出たかったんです。でも看護師じゃないと東京には出さないと父に言われて親元を離れたくて看護師を選びました。

たまご:お父様は看護師にとても信頼を置いてらっしゃったんですね。

絵美さん:やはり当時から看護師は女性の働きたいランキングには上位に入っており、女性の働く職種としては比較的安定している印象があったのだと思います。

たまご:看護師は今でも働き口が多く、いつの時代も需要が高い印象は強いですね。

絵美さん:私は、机上の勉強がとても苦手でした。1年生から単位を落としまくり、国家資格が受かってもその後に、取得できていない単位分の再々再々再試が待ち受けていて、それを落としたら卒業できないという、崖っぷちギリギリな人間でした。それでもなんとか卒業できました。人生で一番勉強したのは、看護師国家試験とその後の追試の勉強でとても苦労しました。

たまご:再が多すぎて何回落ちたのかわからなかったのです(笑)

たまご:看護の専門学校ってどういうところなのでしょうか?

絵美さん:めちゃくちゃ厳しいところです。精神が病んで途中で辞めてしまう人も多いですね。

たまご:忙しすぎてですか?

絵美さん:忙しさは若さで何とかなるんですけど、日々激詰めされるのでメンタルがやられます。毎日症例に合わせて自分なりの処置を書いて提出するのですが、その回答に対して、「その根拠は?」「根拠は?」と突き詰めて聞かれます。その繰り返しの日々なので、自分に自信がなくなりますね。

絵美さん:でも、人間としてというか人として、最低限の礼儀とか、厳しさみたいなのは経験させてもらったので、若いうちに経験できてよかったと思います。

絵美さん:それに、看護師になるという目標を持って、国家資格に合格するために実習や勉強を頑張って乗り越えた仲間は今でも絆が強いなと思っています。

たまご:本当にドラマの世界みたい!でも人の命がかかっている世界はそこまで厳しくないといけないということですね。

看護師=正社員のイメージが崩れた瞬間 フリーランス看護師になるには?

たまご:フリーランス看護師の働き方について詳しく教えてください。

たまご:絵美さんの今のお仕事分野の割合はどのくらいですか?看護師と自社ブランドのお仕事と。

絵美さん:今は自社ブランドが大きくなってきたので、看護師の仕事は全体の1割程度です。残り4割が自社の経営の仕事で、5割は子育てですね。

たまご:そうですよね。子育ては24時間ですもんね。

たまご:フリーランスの看護師の仕事は時給制なのでしょうか?

絵美さん:ITで使う業務委託と医療現場で使う業務委託は少し違って、ITは委託された業務を遂行して成果物を完成させることで報酬を得ますが、現場の看護業務の場合はパートやアルバイトのような時給制が多い印象です。

絵美さん:最近では、ワクチンの業務やコールセンターの健康相談を行う業務です。現場に行かなくてもできる業務だと「看護師監修」の医療記事、クリニック制作物の監修などもありました。

絵美さん:あとは、SNSでセルフブランディングを行なっている看護師さんが集客や商品をPRするといったインフルエンサーのようなものがあったりします。

絵美さん:看護師の知識や経験を使えば、現場の業務だけではなく、子育て中の急に休みが欲しい時や、子供のお昼寝の間に仕事をするという働き方もでき、融通が効きやすくなります。

たまご:看護師はそれこそ急に休めない仕事ですよね。子育てとの両立が大変そうです。

たまご:フリーランス看護師になろうと決断したきっかけは何ですか?

絵美さん:クリニックの立ち上げの際に出会った木村映里さんの影響が大きかったです。

絵美さん:『医療の外れで 看護師のわたしが考えたマイノリティと差別のこと』『看護師に「生活」は許されますか』という本を書いている方なのですが、その方との出会いは私の中で『看護師=正社員』という固定観念が崩れた瞬間でした。

絵美さん:木村さんは、今は本を出されていますが、クリニックで働いている時から、webライターのお仕事などもされて、クリニックの広告や集客なども積極的に行なってくださっていて。看護師だからといって看護業務だけでない+αを提供できるとかっこいいなと感じ、看護師以外にも何か自分も身につけたいと思ったきっかけでした。

たまご:看護師さんは週5勤務が当たり前、なんなら週5以上働いている印象があります。

絵美さん:私もそれまでは病棟で週5で働くのが当たり前だと思っていました。看護師は厳しく副業を禁止している病院も多いですし。

たまご:病院に呼ばれたら最優先で飛んでいかないといけないとなると副業するのは難しい職種ですよね。

たまご:今看護師をしている人にもフリーランスの看護師になりたいと思っている方は多いと思うのですが、フリーランスの看護師になるにはどうしたら良いのでしょうか?

絵美さん:今はSNSで看護師をしているからこそわかる美容や医療の情報発信をして自分をブランディングしている人が多いですね。

たまご:美容垢の方って看護師さんなんですか?!

絵美さん:美容系のYouTuberさんとかTikTokの看護師アカウントは増えていますね。その方々はフリーランス看護師としても働いており、自分たちのSNSでファンを作りSNSから仕事の依頼を受けている人も多いです。

たまご:確かにTikTokでは美容系の看護師さんのアカウントは最近頻繁に見るかもしれないです。皆様そうやって自分をブランディングされいるんですね。

PRをしないとお客様には見つけてもらえない

たまご:クリニックを立ち上げたときのお話を詳しく聞かせてください。どのようなことが大変でしたか?

絵美さん:とにかく集客が一番ですね。集客したお客様を継続してもらうことももちろんですが、継続して「新規のお客様の集客」を続けないといけないということが一番難しい!それに伴ってお客さんが来ないときに一緒に働いているメンバーのモチベーションを維持するのも大変でした。

たまご:集客はやっぱり一番大事ですよね。どのような集客を行っていたのですか?

絵美さん:毎日SNS投稿と、あとはコツコツ人脈づくりとかですね。

たまご:どのくらいの期間で軌道に乗ってきましたか?

絵美さん:結局クリニックは閉業してしまいました。

絵美さん:でも失敗から学んだこともたくさんありました。まず1つ目は教育は私には向いていないということ。私は人の教育をするのが苦手だと気づいたのでそれは今後は自分ではやらないと決めました。

たまご:苦手分野は他に特性のある社員さんや専門家に頼むのが得策ですね。

絵美さん:2つ目はPRしないとお客様は来ないということ。いくら先生や看護師の人柄や技術が良かったとしても、PRしなかったら誰にも見つけてもらえない。

絵美さん:3つ目は現場とマーケティングの意思疎通は大事ということですかね。

たまご:今はみんな病院を探すときにネットで調べて一番上の方にある病院から選んで来院するので、宣伝しないことには見つけてもらえないですよね。

たまご:現場とマーケティングの意思疎通とはどういう意味でしょうか?

絵美さん:病棟の看護師とはここもまた少し違うところなんですが、恥ずかしながら今振り返れば、クリニックの立ち上げまでは色々と部署が分かれていて現場で勤めていたいち看護師だったので、マーケティングのマの字も知らない、さらに経営も知りませんでした。

絵美さん:元々現場業務がメインですから、お客様とのコミュニケーションの中でニーズをキャッチしたり、お客様の反応は現場の私たちが一番に感じていました。しかし、集客を行うマーケティングは部署が違うと見てるものが違うので、ギャップも生まれてきます。

絵美さん:だから現場とマーケティング部門のギャップはコミュニケーションが必要だと思います。あの頃はわからないことが多すぎました。1日3人お客様が来ただけで満足してしまうこともあり、経営のことを考えるとそれでは採算が合わないですよね。

たまご:なるほど、人件費や病院の維持費など経営に必要なお金のことなどの知識がないままに経営は難しいということですね。

絵美さん:この失敗で学んだことは今のケアテアという化粧品ブランドを運営していくのにとても役に立っています。

たまご:自社ブランド『ケアテア』の誕生秘話については後ほどインタビューさせてください。

潜在看護師の発掘 看護師の仕事に戻りたい人の助けになりたい

たまご:会社として今後やっていきたいことは何ですか?

絵美さん:自社ブランドの成長を期に、今後は美容・医療の人材分野を展開していきたいと思っていて、潜在看護師の発掘に力を入れていきたいと思っています。

たまご:潜在看護師とは何ですか?

絵美さん:看護師の資格は取ったけれども、例えば精神的に病んで働くことができなくなってしまった人や、一度結婚や子育てのために看護師の道を離れて、看護師の免許を持ちながらも看護師として働いていない人のことです。

絵美さん:子育てをしながら看護師ができる、働く時間の交渉ができる、かつ最先端の医療の情報を取り入れる研修の場所は別で設けたい。看護師の仕事に戻りたいのに戻れない人たちが戻れる場所を作りたいと思っています。

絵美さん:こういった動きは大手の病院や人材会社よりも中小企業の方が動きやすいんです。ある時そのような内容の論文をネット上で見つけました。

絵美さん:この論文を読んだときに潜在看護師の発掘という仕事は『私にやれってことかな』と確信しました。

たまご:かっこいい!使命を感じたんですね。

資格は自分の専門性の象徴となり、価値を高めてくれる

たまご:将来看護師になりたい人にメッセージをお願いします!

絵美さん:私は看護専門学校卒業ですし、看護師になりたい一心でした。その後の人生も、看護師の道しかないと思っていました。

絵美さん:今はSNSが当たり前の時代だから、情報収集してる人もいっぱいいるし、フリーランス看護師という言葉が流行っていると思うけれど、でもそれは、視野の狭い看護学校の中だけの環境で、一歩社会に出てみたら看護師じゃない仕事もいっぱいあるし、看護師の資格を活かした仕事もあります。

絵美さん:なりたい一心で夢中になるのもいいけど、趣味でもバイトでもなんでも、他にコミュニティがあると学生のうちから視野が広げることができるかなと思います。私自身、看護学生2年生の途中で、退学しようと考えたこともありましたが、今は看護師免許の資格だけ取っておいてよかったと言いたいです。

たまご:看護師資格を持っていて良かったなというのは、どのようなときに思いますか?

絵美さん:ネットが普及したことで医療現場でなくても看護師の資格を活かせるようになってきました。今はライティングやディレクターの仕事をしていますが、その背景に看護師監修のというワードをつけられることは大きな説得力になると思います。

絵美さん:今の時代、明日何が起こるかわからないので、収入の軸が何個もあった方が良いなというのはフリーランスになったときに実感しました。看護師以外のこともできた方がいい。

絵美さん:そして、自分がどういう生活や人生を歩んだら心が豊かになるのかと、自分と向き合うことが一番大事かなと思います。美容や医療の仕事に携わっていく中で、やはり看護師資格を持っていることは自分の専門性で価値を高めてくれるものだと思います。

たまご:どの職種でもフリーランスが増えている中で、自分のブランディングとしてなにかの資格を持っているとうのは今後重要視されてきそうですね。

たまご:絵美さんは看護師の仕事が好きなんですね。

絵美さん:好きですね。だから完全に現場を離れたくはないです。今後は看護師の仕事もしながら看護師として働きたいという人の仕事の幅を広げたい。

たまご:絵美さんの力で看護師としての働き方に新たな選択肢が生まれそうですね。

株式会社ミュール 会社概要

会社情報

https://m-ule.jp/
ケアテアブランドサイトhttps://nurse-project.com
ケアテア公式サイトhttps://www.caretea.jp/

木村映里さん著書

編集後記

私は看護師の方にインタビューをさせていただくのは初めてだったので、看護学校がそんなに大変なところだというのを初めて知りました。

就活生の方の中には自分が目指している業界が世界のすべてだと思ってしまっている方もいるかもしれません。

私は絵美さんも、世界はここだけではない、学生のうちにしかできないことをしていろんな世界に触れてほしいという言葉に強く共感しました。

感染症の大流行や、近年稀に見るインフレ、それに伴った税制改正や、第三次世界大戦をも予期させるような戦争の勃発など、ここ数年で日本及び世界では5年前には想像もしていなかったことが現実となっています。

そんな明日何が起こるかわからない世界で生き抜くために、自分を守れるのは自分自身だけです。

収入の軸を何本も持つ、自分のお金を持っておくというのは今後の世界を生きてくなかで一つの重要なポイントになってくると思います。

この記事が少しでも多くの就活生・看護学生・看護師さんたちの今後のキャリア選択のヒントになればと思います。

投稿者プロフィール

レイニー
レイニー
美容が好きな20代。貯金は美容にかけていることが多いです。
インコのザシアンと一緒に暮らしています。

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